根本原因:ピーター・リムのオーナーシップ(2014年〜)
2014年、経営破綻寸前だったバレンシアを、地元銀行バンキアからの売却という形でシンガポール人実業家ピーター・リムが買収した。当時は経営危機からクラブを救った「救世主」として迎えられた経緯がある。
就任1年目はジョルジ・メンデスと組んでポルトガル系選手を積極的に補強し、4位でチャンピオンズリーグ出場権を獲得するなど順調な滑り出しを見せた。しかしこれは「有望株を安く仕入れて市場価値を上げ、他クラブに売却する」というビジネスモデルが前提になっており、地元との軋轢やメンデスとの関係悪化もあって、このスキーム自体が早々に行き詰まった。
その後リムは目に見えてクラブへの関心を失い、スペインにもほとんど姿を見せなくなったと現地では見られている。補強予算はほとんど出されず、毎年のように主力を放出しては安価な代替選手で穴埋めする状態が定着。監督就任時に約束された補強予算が守られないまま数シーズンで解任されるサイクルも繰り返されてきた。
スポーツ面の帰結
戦力の空洞化:潤沢な補強ができない分、育成組織(カンテラ)出身の若手に頼らざるを得ない編成が常態化している。センターバックを筆頭に、まだ一部リーグで安定して戦うには経験不足な選手層でシーズンを乗り切らなければならない状況が続く。
補強の質の低下:主力になり切れていなかった選手を獲得するケースも目立ち、9番(センターフォワード)不在を埋めきれないままシーズンに入ることもあった。
精神的な脆さ:試合で先制しても追いつかれると簡単に浮き足立ち、勝ち切れない試合を落とす傾向が現地の分析でも繰り返し指摘されている。経験不足な若いチームゆえの側面が大きいとみられる。
2024年の自然災害(バレンシア洪水/DANA)
2024年10月にバレンシア地方を襲った大規模な洪水被害は、クラブの本拠地地域にも甚大な影響を及ぼした。選手の中にも家族や身近な人が被災したケースがあり、トップチームは支援活動やボランティアに関わる一方、これを「戦う理由」として結束を強めた側面もある。災害後の一戦で好内容の勝利を収めるなど、精神的な支えになっているとの見方もある。
財務・スタジアム問題
新スタジアム「ノウ・メスタージャ」は20年以上にわたり工事が凍結されていたが、バレンシア市・州とクラブの協力でようやく再開にこぎつけ、2027年夏の完成を目指している状態(詳しくは「クラブを知る」タブを参照)。長期間工事が止まっていた背景にはリム体制下での資金不足があり、2025年にはリム自身がクラブの売却意向を示し、保有株式の対価として約4億ユーロを想定しているとの報道もあったが、売却完了は本稿の情報時点では確認できていない。
それでも消えないファンの熱量
経営面がここまで混乱していても、ホームゲームのメスタージャには毎回4万人超のファンが詰めかけ、年間シートもほぼ完売状態が続く。批判の矛先が選手やチームではなく一貫してオーナー側に向けられているのは、逆説的にファンとチームの結びつきの強さを物語っている。
本ページは現地解説番組の分析(2023年・2024-25シーズン取材)および各種報道をもとに独自にまとめたもので、原文の引用ではありません。オーナーシップ・財務状況は流動的なため、最新情報とは異なる場合があります。